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「おうちでコーヒー。」

FORKUL/LIFE STYLE

2024.01.12

お気に入りのカフェもいいけれど、自分で淹れるコーヒーがおいしければ、おうち時間もちょっとスペシャル。リラックスして過ごすいつものひとときに、おいしいコーヒーを楽しみませんか。

おうちのコーヒーを、もっとおいしく。
コーヒーのプロに淹れ方を教えていただきました。

高松市にお住まいのHさん一家は、ご夫婦と娘さんの3人暮らし。約10年前、「自分たちの手でつくる」をテーマに、こだわりの我が家を新築しました。奥様は毎朝自分で淹れたコーヒーをオフィスに持参し、休日はフレンチプレスを楽しむ大のコーヒー好き。今日は「淹れ方をちゃんと知りたい」というリクエストで、プレスやドリップのポイントを『リマコーヒーロースターズ』の林さんがレクチャーします。

「おいしいコーヒーを淹れる時のマストアイテムが3つあります。ミルと、ドリップケトルと、密閉容器です」と林さん。どんな豆も、新鮮で挽きたてが一番いい香り。安価なもので充分なので、ミルはぜひ手に入れましょう。ドリップケトルは細くお湯を注げて豆に余計な刺激を与えないため、雑味が少なく仕上がります。豆の保存は、密閉容器に入れて直射日光の当たらない涼しい場所で。挽いた豆を買ってくる場合は2週間、豆のままなら1~1.5カ月が保存の目安です。

「フレンチプレスは豆の味がストレートに出ます。おいしい豆ほどおいしいコーヒーになるけど、豆の劣化も味に表れやすいので注意して」という林さんの監修で、まずはフレンチプレスからおさらい。普段はお店で挽いてもらった豆を使う奥様も、今日はミルで挽くところからのスタートです。

1人前目安の豆14gとお湯220㎖をきちんと計量し、お湯の3分の1量を注いで30秒待ったら、豆全体にお湯がふれあうように残りを注いで3~4分。豆を刺激して雑味が出ないよう、静かにプレスしていただきましょう。「おいしい!」と奥様も思わずため息。「温度が下がるにつれて味の変化も楽しめますね。いつも適当で、すごく薄くなったりしてましたけど、これなら安定しそう」と嬉しそう。

次はいよいよハンドドリップに挑戦。「プレスよりクリアに味が出る抽出法で、豆の悪いところが出にくく、バランスの良さが際立ちます。慣れてくると『豆の甘さだけ抽出する』なんてこともできるようになりますよ」と林さん。

味の深さは、豆とお湯のバランスで決まります。中煎り86~88度、深煎り80~82度、浅煎りはちょっと高めの92度が目安。硬度は水道水がちょうどよく、中硬水を使うときりっとシャープな味わいに。「コーヒーは科学」という林さんの言葉通り、温度と量が味の決め手です。

「自分の好きな味を見つけられるようになったらいいな」と奥様。丁寧に淹れたおいしいコーヒーがあれば、家族と過ごすコーヒータイムが、もっと特別になるかもしれません。

 

「グアテマラ」は中煎り~中深煎り。酸味はほどほどで苦みもあり、日常使いに飲みやすいバランスのいい豆。「エチオピア」は中浅煎り~浅煎り。酸味と甘みが特長で、フルーティで香り高く、スイーツとも相性◎。試行錯誤を楽しむホビー向けにもおすすめ。

 

林さんはHARIOのスクリュー型円錐ドリッパーを愛用、対流を促す溝の形が特長です。理化学で使用されているビーカーをコーヒーサーバーにしたビーカーサーバーは幅広く平たいハンドルが安定して持ちやすく、注ぎやすい形状。目安メモリが付いているので計量カップとしても使用できます。見た目もおしゃれでかっこいい。

 

豆は生き物。古いガスや古い空気は嫌なにおいのもとになるため、毎日飲まなくても一日1回は保存容器を開けるのがおすすめ

 

日頃はフレンチプレスを押す役を務める娘さん。コーヒーは飲めないが一緒にお茶の時間を楽しむ

コーヒーの豊かな香りが満ちるリビングは、2階まで大胆な吹き抜けになっています。この家は、Hさんご夫婦が「自分たちの手で」にこだわってゼロからデザインしたもの。2人で2カ月かけてすべての部屋の床材と中木に色を塗った、思い入れの深い住まいです。個性的な空間デザインはもちろん、素材から照明、スイッチパネルに至るまで、お2人がいいと思ったものをひとつひとつ選び抜きました。「子どもができて、暮らしも住まいも生活感が出てきましたけど、『無理をしない』をモットーに楽しんでいるんです」と、マグカップを片手にほほえむ奥様。

心地良い空間で、肩の力を抜いて、自分らしく暮らす。そんなかざらない家族の姿を、コーヒーの香りがゆったり包む、午後のひとときでした。

 

太い梁が印象的で遊び心に満ちた空間。床材は無垢杉。あたたかみのある雰囲気だけでなく、住宅性能の高さが快適な住み心地を支える。

「レクチャーのお礼に」と一服点ててくださった、茶道・石州流師範の資格をお持ちの奥様。和室は設計段階から茶室としてのしつらえを整える構想があり、和室の畳の下にはコンセント式の電熱で加熱できる炉が切ってある。

 

「小さくてもいいから、こだわった家に」という思いが詰まった住まいだからこそ、愛着もひときわ深い。

 

奥様がデザインした一本一本手打ちで作られた笹岡鋏製作所の包丁を10年以上愛用。手入れをし、研ぎ直しをすることで長く使うことができる。錆びも愛嬌。